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理想のバラを求めた歴史

バラは私たちの暮らしの中で、身近な存在です。咲いている花はもちろんですが衣・食・住と、生活のいたるところでバラに出会います。生活の中に溶け込むバラにも歴史があることをご存知でしょうか。

自分の育てているバラに歴史があり、その歴史を思い巡らせながら育て、花を眺めると、なんともいえない不思議な気持ちになり楽しくなります。

バラの歴史は品種改良の歴史であり、その系統はとても複雑です。人はバラの何に惹かれ、改良してきたのか、その歴史をまとめました。

理想のバラを求めたオールドローズの歴史

世界中には無数の植物がありますが、単一植物だけで庭を造ろうとしたら、それを可能にするのは、おそらくバラだけでしょう。バラには、頭上を覆うように伸びるクライミングローズをはじめ、垣根を造るルゴサなどのオールドローズ、背景を造る背の高いバラや、柱に沿って伸びていくバラ、さらには足元を飾るために適した小型のバラなど、数限りない品種が存在します。例えば椿で庭を造ることも可能ですが、クライミングタイプやミニチュアタイプなどの種類はないので、バラほどトータルな庭造りはできません。
 
どうしてバラだけが、単独で庭を造れるぐらい品種が増えたのでしょうか。まずバラの一番の特長として、単独で生き続けられる特性が備わっていました。バラはその昔、ユーラシア大陸に存在し、有史以前から食用などに使われていたと言われています。原種のバラは、大半が5枚花弁の一重ですが、それゆえに自家受粉が容易で、しかも昆虫をひきつけるための香りや色を有していたほか、略奪者から身を守るためのトゲを兼備し、悪条件下でも生き続けられる特性を持っていました。
 
その後のバラは、世界史レベルで無数の人々が関わり合って進化を遂げていきます。それは理想のバラを求め続けた品種改良の歴史であり、文明の発展と共にその勃興する地域に中心が移って行ったのです。これには二つの理由がありました。
 
一つは、バラの花が極めて高貴な美しさを持っていたこと。
 
二つ目は、香りが素晴らしく香水やバラ水づくりに使われたことが挙げられます。
紀元前、ユーラシア大陸からギリシャ、ローマに渡ったバラは、ローマ帝国の衰退と共に中東に戻り、再び十字軍によってヨーロッパに持ち込まれました。
バラが北ヨーロッパの寒さに負けないことが判ると、ガーデンローズとしてだけでなく大量栽培による香水づくりにも利用され始めました。
15~16世紀には、オランダで積極的な交配種づくりが始まり、18世紀になるとフランスにおいて計画的な育種方法で、新品種が次々と生まれました。
 
同時期、英国でもバラは盛んになり、東洋進出が本格化するにつれ、バラの世界に画期的なことが起こりました。それは、四季咲きの遺伝子を強く持つチャイナローズが、英国やフランス及びその植民地に渡ったことに起因します。
 
チャイナローズは、紀元前のはるか昔から中国でガーデンローズとして栽培されており、その特徴である四季咲き性、剣弁高芯咲き、ティーの香りの遺伝子が、それまでのオールドローズ基本4種(ガリカ、ダマスク、アルバ、センティフォーリア)の世界に浸透していきました。
その結果、四季咲き性のオールドローズ(チャイナ、ポートランド、ブルボン、ノアゼット、ハイブリッド、パーペチュアル、ティーローズ)が次々と生まれ、今日のバラの基本が確立したのです。

その後日本原産のバラも歴史に加わりました

幕末の開国と共に、日本のイノバラやテリハノイバラ、ハマナシも西欧に渡り、バラの世界に、照葉や小輪房咲き、強健さなど、重要な特性をもたらしクライマー、ランブラー、ハイブリット・ムスク、ルゴサ、ポリアンサ、フロリバンダなどの作出に大きな役割を果たしました。

そしてモダンローズが誕生

19世紀後半には、従来と概念の異なる画期的なバラ、ハイブリッド・ティーが誕生しました。20世紀を迎えると、バラは大衆化し、ガーデンだけの植物に留まらずブーケや切花などにも使われ、花色や花形を豊富にするため、いっそう品種改良が進みました。

バラの二つの世界の融合

20世紀後半になると、ビビッドカラーや巨大輪までも生まれたモダンローズに対して、ヨーロッパ(主に英国)で、ソフトカラーのロゼット形の花や香り、ガーデンローズとしての自然な樹形を特徴とする、オールドローズの評価が高まってきました。特に英国のデビット・オースティンは、オールドローズを現代に再現しようと、長年かけて古いバラの良さに、現代バラの四季咲き性や多色性を加えたイングリッシュローズを作出しました。
 
日本においても、従来の園芸とは異なって、庭やベランダで一年中草花を楽しむガーデニングが盛んになるにつれ、ガーデン要素として、ナチュラルなたたずまいを見せるクラシックローズに注目が集まってます。
 
振り返ると、バラの歴史が文明の成熟とともに歩んでいるとするならば、私たちのバラに寄せる気持ちそのものが、現代の時代を反映しているのかも知れません。バラの歴史は人間の美を追求する歴史の一端を担ってきたと考えられます。バラを愛する現代の私たちも、この美の歴史に参加しているのではないでしょうか。
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